ソチ五輪も終盤に差し掛かり、団体と男女シングル、ペア、アイス
ダンス、すべてのフィギュアスケートの競技が終了しました。
羽生選手が日本男子初の金メダルに輝くなど快挙を成し遂げましたがその一方女子はあまり結果が芳しくありませんでしたね。
私たちはこの結果をどう捉えるべきなのでしょうか?
Twitter上でなんで女子フリーの点数がこんなにインフレしたのか?妥当なのか?という質問が多かったのでそれを私が分かる範囲の知識で考えていこうと思います。
(ちょくちょく出ますがSP=ショートプログラム、FS=フリースケーティングの略です)
フィギュアスケートはTESという技術点とPCSという演技構成点の合計で争われます。
TESは単純にジャンプやスピン、ステップの難易度が点数になります。(これを基礎点といいます)
また、それにGOEという出来栄え点が加算されます。例えばジャンプが綺麗に決まればプラスされるし、手をついたらマイナスされる、といった感じです。
9人のジャッジがそれぞれの要素に対して-3~+3までの評価をつけ、1番高かった1人と1番低かった1人の評価を切り捨て、あいだ7人の中からランダムで5人の評価が選ばれ、平均値がGOEとして実際に点数となります。
まあものすごく簡単に言えば難しい要素を完璧に美しくこなせばいい点数になるし、難しいことでも手をついたり何らかの乱れがあったらいい点数は出にくいってことですね。
・スケート技術
・要素のつなぎ
・動作/身のこなし
・振り付け/構成
・曲の解釈
以上5項目があってそれぞれのジャッジがそれぞれの項目を10点満点で評価します。その合計(50点満点)を女子FSなら×1.6したものがPCSの合計点になります。
すこし違いますが、一般的に表現力、とか言われるものがここで点数化されるんだと思ってください。
ただこの
GOEとPCSというのがジャッジの主観になりがちでフィギュアスケートの採点においては問題視されています。
例えば
パトリック・チャン選手と
小塚崇彦選手はスケーティングが世界で最も評価されてる男子2選手ですが、この2人は大会によってはスケート技術の評価で2点近く差が付きます。(画像は少し極端ですが2012年世界選手権。大体どの大会でも0.5~1点程度の差はあります)
ただ
長野五輪代表の
田村岳斗さんも「自分には差が分からない」と言ってるくらいなのでかなりジャッジの主観が入ってしまっていることが分かります。(決して
パトリック・チャン批判ではありません。パトリックの滑りは大好きですよ!)
そしてここでみなさんも疑問に思われている今回のソチ五輪女子FSの話に戻します。今回の五輪では前述したGOEとPCSに関してちょっとすごいことが起こっています。
実際どうすごかったのか、結果の方を分析していきましょう。
①GOE(出来栄え点)
実際の演技を見てた方なら分かると思いますがそこまでの差を感じられた方は少ないのではないかと思います。
コストナー選手の演技は流れの途切れることのない、とても美しいものでしたが、それを基準にしてはたして
ソトニコワ選手、
キム・ヨナ選手、浅田選手の加点が妥当とは言い難いかもしれません。
②TES(技術点)
先ほども言ったようにTES(技術点)=基礎点+GOE(出来映え点)の構成です。
③基礎点
TES-GOE=基礎点です。つまり基礎点は演技そのものの難しさ、を表す得点です。このようにしてみると圧倒的に浅田選手が高い点数を得ていることが分かります。
①~③を簡単にまとめて表すと
コストナー 68.84→58.45 +10.39
こういうことになります。
浅田真央(mao asada) ソチ伝説のFS ~ タラソワ氏の解説(日本語訳付 ...
ソトニコワ 74.41
キムヨナ 74.50
表現力が点数化されるPCS、上位選手の中で浅田選手だけ何故か点数があまり出ていません。浅田選手の表現力がなかったのか?動画を見ていただければ分かる通りもちろんそうではありません。
PCSに関してもジャッジに対して疑問が残ります。
3.なぜこのような結果になったのか?
ここまで見て「なんだこれ!?不正採点じゃん!?」と感じた方も多いかと思いますがこの点数には一応色々事情があります。
①今回の五輪がロシア開催であること。
ロシア開催なのだからロシアの選手である
ソトニコワ選手や
リプニツカヤ選手にとっては自国開催、ホームでの開催です。それだけ点数が出やすくなります。
②第2グループで滑った浅田選手が素晴らしい演技をしてしまったこと。
フィギュアは滑走順によってもある程度得点が左右されます。最終グループは点数が出やすくなるし最初の方のグループは割と点数が抑えられやすくなってしまっています。よって第2グループの浅田選手は点数が抑えられましたがそれでも142.71。これが基準点となったため今回は最終グループにおいてある種異常とも言える点数のインフレが起こったのかなと思います。
ただ上記の理由があるにしてもここまで読んでいたらだければ分かっていただけたかと思いますが、ちょっとこの結果には違和感を感じます。(ジャッジの主観について散々言っときながら私も主観です。)
ただ、
フィギュアスケートは採点競技。それこそ人間が人間の演技を評価するわけですから仕方ないのかなとも思います。
1つ事実としてあるのは、純粋な演技そのものの難度として浅田選手が1番難しいプログラムをやってのけたということです。
結局スポーツとしてのフィギュアスケートに1番真摯に、誠実に向き合ったのは浅田選手なんじゃないでしょうか。
女子FSのプロトコル(=スコア表)です。参考にしてください。http://www.isuresults.com/results/owg2014/owg14_Ladies_FS_Scores.pdf
【追記】
2万近いアクセスをしていただき、しかもこんなに大きな反響をいただけるとは思ってもみなくて驚いています。
蛇足かもしれませんがこの記事について一応言っておくと、これには選手批判の意図は全くなくて、どちらかと言えばスポーツとしてのフィギュアスケートや現在の採点システムに対する疑問をあげつらうために書いたものです。
そのためこの記事では全く触れられていないことも多くあります。(今回は点数のインフレを中心に論じたかったため浅田選手のセカンド3Tや3Loのアンダーローテーションなどには全く触れていません。)
そしてできるだけ客観的に書こうとしても私自身の主観が多く入ってしまっているのも事実です。 だから結局は色々な立場の人が書いた記事を読んで自分なりに納得していただくのが1番かなと思います。
この記事だけを鵜呑みにせずに自分なりに情報を集めて結果的に多くの人にスケートに対して興味を持っていただければ幸いです。